【続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!)
【佐藤和文】ジャズアルトサックスの基礎から教えていただいているアルトサックス奏者名雪祥代さんがクラシックからジャズに移って20年になるのを記念するライブが2024年12月6日、仙台市青葉区のエル・パーク仙台で開かれました。名雪さんの3枚目のCD「Psithurism(シスリズム)」のリリースを記念する意味もあったので、弟子20人ほどがビッグバンド形式でお祝い演奏しました。筆者は2013年以来、指導を受けているのでもちろん参加。名雪グループのリハーサルから本番まですぐ間近で接する機会を得ました。
ジャズ志願者にとって、人前で演奏する機会は貴重です。ふだんの練習の成果を試されるだけでなく、事前に予想もしなかった事態がいろいろ起きます。場数を踏むほど、何かの足しになるはずだと信じて参加するようにしています。今回はそれに加えて、プロの演奏家が本番までの時間をどう過ごすのか、リハーサルはどんな感じで行われるのかを間近に見る機会となりました。
会場設営のお手伝いができればと早めに行ったため、一部始終を見ることができました。「続・仙台ジャズノート」の連載のため、身近なジャズの現場を求めてうろうろしている筆者としては、最高にラッキーな時間でした。
ピアノの調律が念入りに続く中で、メンバーたちは思い思いに楽器を準備し、確認を続けていました。本番前の緊張感を感じさせながらも、全体としては和やかな空気を感じさせるあたり、さすがにステージ慣れしているように見えました。
お手伝いと言っても、特に決まった役割があるわけではないのでドラマーの露ポンさんに話しかけてみました。露ポンさんは札幌から仙台に移ってきた人。筆者が演奏を聴くのは今回が2回目です。学生時代からドラムで遊んできた筆者にも分かることですが、ドラムの場合、付属品も含めて数が多いのですが、楽器の配置などの細かいセッティングは結局、演奏者が自分でやるしかありません。スタンド類をケースから出すのを少し手伝った後は、パイプ椅子を並べ、ばね式の階段席を組み立てる作業に入りました。リハーサルの直前、名雪さんが「ちょっと早く来た生徒さん」と紹介してくれたので、ふだんなら「関係者以外出入り禁止」のはずのリハーサルも冒頭からしっかり聴くことができました。実に面白い経験でした。
この日の名雪グループは、名雪さんのサックスを軸に、ピアノの谷川賢作さん、ベースの小美濃悠太さん、ギターの細田好弘さん、露ポンさんことドラムの三露采市さん、仙台フィルで活躍したチェロ奏者、山本純さんでした。新譜にも入っている名雪さんのオリジナルを中心に、優しくて、温かい音世界を堪能できました。
蛇足ですが、弟子たち20人ほどが3パートに分かれて参加した曲は『ウィンターワンダーランド」(Winter Wonderland)』でした。メンバーが会場のさまざまな場所から演奏しながらステージに上がる「フラッシュ・モブ」的な趣向でしたが、自分の演奏が気になり、雰囲気を楽しむどころではありませんでした。
事前に予想もしなかったミスが出たのは準備不足?それとも能力の問題でしょうか。本番終了後の週末には、当日のビデオ映像を横目に見ながら、課題曲の構成をあらためて見直す『弟子時間』をたっぷり楽しみましたとさ。みなさん、お疲れさまでした。
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