【続・仙台ジャズノート#7】まずマイルス・デイビスを理解しよう。

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】ジャズ音楽は初心者にとって難しいと言われます。ジャズを楽しむための入り口として前回は「スタンダード」をおすすめしました。原稿を編集者に送った後、一段落気分でネットに出たり入ったりしているうちに、東京中心に活動しているジャズピアニスト、スエナガ タカフミさん=仙台市出身=がYouTubeで、ジャズの巨人マイルス・デイビス=トランぺッターバンドリーダー=を知ることから始めてはどうかと提案しているのを知りました。

スエナガさんの提案はどちらかと言えば、ジャズ演奏者を目指す人の入門編ですが、マイルス・デイビスを入り口にジャズを理解するという考え方は、演奏者以外の、ジャズを聴いて楽しむ人たちにとっても役に立ちます。早速、連絡をとり、スエナガさんのYouTubeコンテンツ「マイルス・デイビスを聞いてジャズの歴史を学ぼう」シリーズを「続・仙台ジャズノート」で紹介する許可を得ました。

ピアノに向かうスエナガ タカフミさん(写真はスエナガさんの提供です)

スエナガさんは次のように語っています。

「マイルス・デイビスはジャズの歴史上、恐らく1、2位を争うほど有名な人。(1991年に)65歳でなくなるまで、現代につながるジャズのおおもとを作った。ジャズは理解するのが難しいと言われるが、マイルスのおおまかな歴史を知っていただくことで、現代につながるジャズをより深く理解できるのではないか」

マイルス・デイビスには時間的にも音楽的にも多様な側面があり、モダンジャズの草分け、チャーリー・パーカーが生きた時代から現代のジャズシーンまでを見通すことができる点が重要です。1926年5月に米・イリノイ州アルトンに生まれたマイルス・デイビスは多くのミュージシャンとの出会いを通じて、ジャズの歴史を刻みました。スエナガさんの「マイルス・デイビス」シリーズでは時期を区切りながら分かりやすく解説しています。モダンジャズの変遷や現代のジャズ演奏家にもたらした影響についても理解できるようになっています。インターネット上には、マイルス・デイビスの作品を実際に聴けるデジタルコンテンツがさまざまあるので、その都度、参照することも可能。いい時代になったものです。

スエナガさんのYouTubeコンテンツには、演奏家、リスナーそれぞれの立場で役に立つ別シリーズがあります。特にマイルス・デイビスが「MILESTONE」「SO WHAT」などの曲で導入した「モード」と呼ばれる理論と奏法にあらためて焦点を当てている点が注目されます。個人的にも関心があるので機会を作ってあらためて紹介します。

スエナガさんは大学卒業後、独学でジャズピアノを習得し、2010年に米国に渡り、バークリー音楽大学を卒業しました。創造性とミュージシャンシップを身に着けた音楽的なコミュニティリーダーを育成するための特別プログラムBerklee Global Jazz Instituteに選抜されました。ニューヨーク中心に活動し、Newport Jazz Festival、BluenoteNYCなどに出演したそうです。

「仙台ジャズノート」の事前取材に入ったばかりの2018年8月、米国から仙台に戻ったスエナガさんがクリニックを開催するというので取材に出かけました。たまたま60過ぎてから始めたアルトサックスの個人レッスン日と重なっていました。楽器持参だったため、成り行きでクリニックを受けることになりました。他の受講者が手伝ってくれてスタンダードSummertimeを演奏したのですが「楽譜を見ないように」と最初から汗だくだったのを覚えています。あまりに稚拙なのでスエナガさんもあきれ果てたと思いますが、そのときにいただいたアドバイスはアドリブ演奏の実際に即したものでした。ジャズ特有のスイングに関する深い話もありました。当然のことながらその段階でとても理解できるものではなく、今なお課題の中心にあります。しかし、スエナガさんのようなキャリアの演奏家の実務的な話は、ジャズ音楽が好きで楽しんでいる立場でも非常に面白い。

以上のような理由で、今回の報告は、インターネットを使ってすべて取材が終わっている点でもユニークです。スエナガさんには(正確には)2度お会いしていたこと、スエナガさんのYouTubeコンテンツを以前から楽しんで利用していた-という二つの前提があって初めて成り立つ事例ではありますが、それにしてもネット環境の急激な進展に加え、新型コロナウイルスの感染拡大のために、情報の受信や発信、コンテンツ(情報の内容)の流通が激変してしまいました。音楽以外のカルチャーの分野においても、すべての当事者を取り巻く環境が激変。それを受けて、正しく対応する必要があります。次回以降、そんなネット環境をあらためておさらいし、ジャズ音楽の新しい可能性についても考えてみようと思います。

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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