今年2020年で30回の節目を迎える仙台定禅寺ストリートジャズフェスティバル。ジャズ音楽をさまざまに楽しむファンや運営に携わるボランティアがステージを支えてきた

【仙台ジャズノート】「なぜジャズ?」「なぜ今?」「なぜ仙台?」

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】自分が住む街で、ジャズについて何かを書いてみたい。長い間、そう願ってきました。準備取材や構成を検討する段階で、いくつかの「なぜ?」に答えを出す必要に迫られました。代表的な「なぜ?」は以下の4つです。

「なぜジャズなのか?」
「なぜ今、書くのか?」
「なぜ仙台なのか?」
「なぜお前が書くのか?」

ジャズ音楽は歴史的にも米国発祥の音楽であり、いわゆる外来の音楽文化の文脈でとらえられてきました。個人的な体験で言えば、ジャズ音楽とともに外から吹き込む風は心地よく、仙台という都市環境をより豊かにしてくれました。他のパートで詳しく報告しますが、仙台にはジャズ音楽に携わる人やグループが毎年の目標に定める音楽イベントが幾つか生まれ、成長してきました。これらの音楽イベントと仙台の都市環境がどうかかわってきたのか、今後、どんなジャズ音楽を育もうとしているのか-。音楽の魅力や可能性をジャンルごとに論じるのは必ずしも適当ではありませんが、音楽全般についておさらいするのはなおさら荷が重いので、最も身近なジャズ音楽にあえて焦点を絞ることで、少しは実になる事柄をつかめればうれしい。可能ならば、他のジャンルの音楽と都市空間との関係について分析する人が出てきてほしい。東京以外のすべての都市を舞台にした音楽ごとのストーリーが見えてくればなおうれしい。

今年2020年で30回の節目を迎える仙台定禅寺ストリートジャズフェスティバル。ジャズ音楽をさまざまに楽しむファンや運営に携わるボランティアがステージを支えてきた
今年2020年で30回の節目を迎える仙台定禅寺ストリートジャズフェスティバル。ジャズ音楽をさまざまに楽しむファンや運営に携わるボランティアがステージを支えてきた(2019年9月8日撮影)

「なぜ今、書くのか?」については、はっきりした答えを出せません。あえて言えば、ジャズ音楽の楽しさを一人でも多くの人に伝えたいから書くとしか言いようがないのですが、それでも今、このタイミングで取材する理屈を探していたら、米国の禁酒法が1920年に制定されてから来年2020年でちょうど100年になる、という歴史的な事実が浮かんできました。禁酒法の成立とともに、酒とそれに絡むビジネスは地下に潜り、ニューオーリンズ、シカゴ、ニューヨークなどの大都市には歓楽街が栄えました。ミュージシャンたちにとって歓楽街は仕事の場となり、米国でジャズ音楽が発達する土壌となりました。ジャズの歴史を語るときに、まず一番初めに登場するエピソードです。

それから100年。筆者にまず可能なのは、その時間の流れのほぼ半分ほどを、身近な人たちの力を借りながら振り返ることです。あくまで自分が住む街の「ジャズノート」であることを目指しています。客観的かもしれないけれども、どこかよそよそしくなりがちな表現は避けることにしました。一人でも多くの現場の人たちにインタビューし、自分の経験や思いをふんだんにちりばめたいと考えています。

最後の「なぜお前が書くのか」についてもあまりはっきりした答えは見つかりません。ただ、長い間、親しんできたジャズの魅力を一人でも多くの人に知ってもらいたいと願っているのは事実です。

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

【連載】仙台ジャズノート
1.プロローグ
(1)身近なところで
(2)「なぜジャズ?」「なぜ今?」「なぜ仙台?」
(3)ジャズは難しい?

2.「現場を見る」
(1) 子どもたちがスイングする ブライト・キッズ

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