【加茂青砂の設計図】男鹿で「ホタルカフェ」が再開 ホタル飛び交う自然、守っていくために

連載:加茂青砂の設計図~海に陽が沈むハマから 秋田県男鹿半島】秋田県男鹿半島の加茂青砂のハマは現在、99人が暮らしている。人口減少と高齢化という時代の流れを、そのまま受け入れてきた。けれど、たまには下り坂で踏ん張ってみる。見慣れた風景でひと息つこう。気づかなかった宝物が見えてくるかもしれない――。
加茂青砂集落に引っ越して二十数年のもの書き・土井敏秀さんが知ったハマでの生活や、ここならではの歴史・文化を描いていく取材記事とエッセイの連載です。

土井敏秀】「男鹿の里山と生きる会」は、男鹿市五里合琴川(いりあいことかわ)地区に、陸上風力発電所建設計画が公になったことで発足した。男鹿半島の里山で生きる先行きに、明るい兆しを見ている若手6人が、抗議の声を上げた。里山が産み出す暮らしのありようが、秋田出身のシンガーソングライター友川かずきの代表曲にちなむと、「生きてるって」言わせた、からである。メンバーの確信は、そんな暮らしを体験したうえで、仲間になろうとする人の増加が裏付けている。

だから、風力発電建設は、時代の最先端技術を強調しても、その明るい兆しに影を落とす存在でしかない。里山の暮らしは、先祖の智恵を学ぶ中に、輝いていたからである。後は自分たちの手で、例えば、耕作放棄地と名付けられ、ネガティブに受け止められる場所を、自然とともに生きる形で、切り開くだけである。「男鹿の里山と生きる会」は宣言で「私たちは、未来を生きる子どもたちへ、この自然豊かな男鹿の里山を生かしつなげたいと思います」を掲げる。明るい未来がある男鹿に今、暮らしている、未来の子供たちに胸を張って、そのまま残す。押しつけではない―どう判断するかは、子供たちにゆだねられる。

男鹿市の五里合琴川地区の田んぼ周辺では、今年もホタルの大群が、夜空の星のようにきらめいている

思惑とか野望といった、大規模開発に付きまとってきた類のものはない。飾ることなく一直線で場面転換、歌舞伎の舞台に駆け上る。自己紹介の口上を、引っ張り上げた。

―知らざあ言って、聞かせやしょう。われら6人男鹿半島で、おてんとさまに恵まれて、森の木々に守られし、自ずから然りと生くべくしみじみと、肩ひじ張るなく鳥の声、寒風山の眺望は、日本海の大海原、遠くにかすむ水平線、360度くうるりと、回れば陸の形がくっきりと、この地への思いがはっきりと、浜の真砂は尽きるとも、語る口から次々と、こぼれ落ちる思いは果てしなく、誰はばかることなくこの愛は、あふれ出るものと悟りけりーぃ―

よっ。琴川屋、箱井屋、石神屋、谷地中屋、鮪川屋、中石屋あぁ、と五里合地区の旧村名で、勝手な合いの手を入れるしかない、ではないか。

またまた次の場面に急展開、琴川地区にも夜のとばりが降りました。そこにほんのり、ろうそくの灯をともす「男鹿の里山と生きる会」代表の佐藤毅さん(47)経営の珈琲店。コロナ禍で2年間休んだ「ホタルカフェ」を今年、再開した。これまでと違って、主催は毅さんではなく「男鹿の里山と生きる会」。趣旨に賛同する出店が、日替わりで飲食を提供するシステムになった。「このホタルが飛び交う自然を、大切に思うみんなのカフェに、なっていくといいな」と話す毅さん。ホタルが多く現れるところに、ろうそくの火をつけながら案内し、説明する役に徹している。

カフェは月の満ち欠けの関係で、前半が6日に終了、後半は18日から24日(午後6時~10時)まで営業する。すんでいるホタルは、ゲンジとヘイケの2種類。ゲンジは林の中をゆっくりと、滑り落ちる長い光りで、ヘイケは瞬くように幾度となく光る。前半は100人の日もあれば、雨で6人の日もあったが、毅さんは「みなさん、あっ、ゲンジだ、ヘイケだって、よく分かっている。リピーターや口コミの人が多くなってきている、と感じます」。

よそに頼ることなく、この地の自然や歴史を踏まえて、男鹿半島での暮らしをどう設計していきたいのか。次回から、会のメンバーの思いを聞きます。それは「加茂青砂の設計図」を描くのに、大きなヒントをくれるに違いない。(つづく)

「環境配慮書を読む」③意見書を送る

「(仮称)五里合風力発電事業」(日本風力開発、本社・東京)の「環境配慮書」は、インターネットでも見ることができた。男鹿市役所などで縦覧できたのと同じく、期間は1カ月に限定されていたが、この計画に対して意見がある場合は、指定の文書をダウンロードするよう指示された。住所、氏名、意見―とスペースが分けられているが、文字を打ち込むことができない。意見は手書きで、ということである。縦覧できる場所に設置されている箱に入れるか、郵送でしか受け付けない。手軽に意見を、ではなく、手順をきちんと踏まないといけないのだ。

大した役に立つわけではないと分かっているが、私が送った意見書は次の通り。

五里合琴川地区は、過疎地、耕作放棄地などと、ネガティブに言われる場所を、自分たちの手で切り開けば、未来に光がさすと、自信を持ち始めている若者たちが暮らしている地区です。自分自身を自然の中の一員として、謙虚に位置づけた生き方です。
そこに、大型風力発電所を建設するということは、これまで日本列島で繰り広げられてきた「大規模開発」がたどった道を、反省することなく、繰り返すことになりませんか。
立ち上がった若者たちを踏みにじって、得られるものは何なのでしょう。
彼ら世代、そして次の世代の思いと自然を壊し、いずれゴミになる人工物を建てる「大義名分」は、成り立たないと考えます。建設計画に反対します

出した後、配慮書を読み直してみて、気づいた。求めている意見は建設是か非か、じゃないかもしれないな、と。建設に先立って環境に配慮するため、さまざまな角度から調査を行ったことに対しての意見、つまりは調査項目、調査方法などに対して、具体的な指摘を求められていたのではないか、と考えた。調査の不備を指摘されれば、それは配慮が足りなかったことを意味する。その点を補足調査し、報告を完璧なものにするための意見、ということである。建設ありきは当たりである前に前提なのだ。「環境配慮書」という言葉に仕掛けた狙いを考えると、やはり「アリバイ工作」という半ば死語を思い浮かべた。私の意見は、役に立たないどころか、チェックの最初の段階で、外されている可能性が高い。トホホである。

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