太平洋に浮かぶ赤道直下の島国、キリバス共和国は、地球温暖化に伴う海水面の上昇により、深刻な国土浸食の危機にさらされていることで知られています。仙台出身のケンタロ・オノさん(39)は15の年にキリバスに渡り、そのまま国籍を取得してキリバス人になりました。東日本大震災を機に仙台に戻り、地球温暖化に伴う海水面の上昇や世界各地で頻発している大規模な自然災害への警鐘を鳴らす講演活動に取り組んでいます。「存亡の危機にある」(オノさん)キリバス国の名誉領事として、日本とキリバスのかけ橋になることを目指すオノさんに話を聞きました。【佐藤和文/メディアプロジェクト仙台】
ーー今、どんな活動に携わっていますか?
オノ 公益財団法人「みやぎ環境とくらしネットワーク(MELON)」の「ストップ温暖化センターみやぎ」からお声掛けいただき、宮城県内の小学校や高校など20校を中心に、キリバスの実情を伝え、地球環境問題への理解を訴えています。僕の役割は、まずキリバスという国について多くの人々に知ってもらうことです。科学者でも研究者でもないので、自分の目で見たままの実体験を伝えようと思っています。気候変動のためキリバスが厳しい現実に直面しているのは確かです。だからと言って、ああしてほしい、こうしてほしいとは言わないように心掛けています。キリバスに関する情報を受け取った方々が考えることのすべてが正しいかもしれないし、その逆に間違っているかもしれないからです。地球環境問題はシングルイシュー(単一の問題)に絞って解決できるわけではありません。それほど複雑で難しい。
ーーキリバスはどのような国ですか?
オノ キリバスはサンゴの環礁にできた島国です。国土の長さは5000キロに及びますが、幅は300メートルから500メートルしかありません。細長いサンゴ礁の上に10万人が住んでいます。そのうち首都タラワの人口は5万人。海抜はわずかに1.5mから2mです。山がないので川もありません。日本では津波が来ると、海岸線からなるべく離れてください、できるだけ高い所に逃げてください、と言いますよね。キリバスでは海岸線から離れると反対側の海岸に出てしまいます。逃げるべき高台もありません。
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