【高校生が取材した沿岸部の今】汚水の逆流を防いだ仙台の影の功労者「南蒲生浄化センター」

【高校生が取材した沿岸部の今】東日本大震災から10年を迎える仙台市沿岸部の今を知り、伝えようと、尚絅学院高校インターアクト部の生徒たちは昨年から、宮城野区中央市民センターのもと沿岸部各地で取材活動を行ってきました。震災当時幼稚園生や小学生だった高校生たちは、取材を通じて何を感じたのでしょうか。TOHOKU360では4回にわたり、高校生たちがこの一年で執筆した記事を掲載します。

東日本大震災による壊滅的被害を乗り越えた南蒲生浄化センター。そこではいま、近未来型下水処理場を目指すさまざまな取り組みが行われていました。

仙台の汚水の約70%を処理

南蒲生浄化センターは、宮城県仙台市宮城野区に位置し、宮城県を代表する川のひとつの七北田川の河口近くにあります。また、海と建物がとても近く直線距離にすると約200mしかないそうです。実際に、浄化センターから海を見てみるととても近く200mというのも納得できるなと思いました。

貞山堀から見た、南蒲生浄化センター

南蒲生浄化センターでは仙台市で発生する汚水の約70パーセントを処理しています。70パーセントといってもどのくらいの量か想像しにくいと思うので、25メートルプールで例えると、約700杯分にもあたります。このように、南蒲生浄化センターは東北でも大規模な浄化センターであり、人々の生活を大いに助けています。また、日本の中の下水道事業の発達においてとても重要な役割を果たしていました。しかし2011年3月11日の東日本大震災で甚大な被害を受けてしまいました。

津波の到達位置

職員たちのゲート開放作業が、仙台のマンホールから汚水があふれることを防いだ

2011年3月11日の東日本大震災で南蒲生浄化センターは壊滅的な被害を受けました。最大の津波の高さ、TP+10.4mの巨大津波によりゲートスピンドルが破壊、逆流を恐れたため職員は緊急ゲート撤去解放作業をしました。しかし道路には車での進入は不可能だったため、5kmの道のりを徒歩で進入調査しました。この行動により、マンホールから汚水があふれ出ることを防ぐことができました。

津波に襲われた南蒲生浄化センター(提供写真)

しかし施設は津波の影響により建物の電気設備が浸水しほぼ全損、機械設備も多くが流出、破損しました。さらに管理棟玄関には5台の車が流れてきたため施設を使える状況ではありませんでした。また主ポンプ棟は津波の波圧で湾曲し、今もその痕跡が残っています。これだけの甚大な被害が及びましたが市職員34名、作業員67名は翌日に陸上自衛隊のヘリに救助され全員無事だったそうです。このように南蒲生浄化センターの人的被害がなかったのは、職員の方々が津波などの自然災害が起こった時の避難訓練が普段から行われていたからだと駒場さんが仰っていました。

被災した南蒲生浄化センター(提供写真)

壊滅的な被害から、4年をかけて復旧

海から200メートルの場所にある南蒲生浄化センターでは、同じような事が二度と起きないように、様々な取り組みが行われています。まず低い位置にあった水槽を津波が来た高さまで高くしました。そして、元の場所と同じ所を全て解体し、作り替えました。通常では、10年かかると言われている復旧作業を全国からの支援を受け4年というとても短い期間で復旧することができたそうです。

この4年間は、施設が使えないため池に汚水を放流し、簡単な処理を行い、海に流していました。ですが、様々な問題を抱えていました。宮城県では、養殖業が盛んな為いつまでも海に流せない事や、簡単な処理の為、国の基準をオーバーしてしまうなどの問題を抱えていたからです。街に汚水が流れるだけではなく、環境悪化にも繋がるため、できるだけ早い期間で復旧させなければならなかったそうです。復旧費は令和元年7月の時点で約640億円という多大な金額がかかったことから施設に甚大な被害が及んだことが分かります。

復旧後の南蒲生浄化センター(提供写真)

浄化センターの負担を減らし綺麗な水を保つために、いま私たちができること

東日本大震災での膨大な被害を乗り越えた南蒲生浄化センターは国の政治家や専門家が年間50組以上訪れる、とても大きな浄化センターにまで進化しました。しかし今年度は新型コロナウイルスの影響で例年に比べ来訪者数が減少したそうです。コロナ禍の現在、下水にもコロナウイルスが含まれているらしく下水水質担当の方々は下水に触れない、目に入らないよう気をつけて日々私たちの生活のために水質チェックを行ってくれています。

このように私たちの生活のため日頃から様々なことに取り組んでいる南蒲生浄化センターの方々のため、私たちができることは何でしょうか。1つ目は台所や風呂場などでは水切りネットを使用することで、排水口に細かいゴミが流れ込むのを防げます。2つ目は、油類は直接水道には流さず、新聞紙や要らない布などに染み込ませて加熱ゴミとして捨てるということです。このことにより下水管の詰まりや悪臭の原因を防げます。3つ目は石鹸や洗剤、トイレットペーパーの使用量を減らすということです。水が酷く汚れたり、水を綺麗にしてくれる微生物が弱ってしまったりするのを防ぐことができます。このように、私たちが少し意識して生活するだけで浄化センターの方々の負担は少なくなります。綺麗な水を保ち私たちが安全な生活を送るためにも、日頃の生活や行動を見直してみましょう。

(取材・執筆:関ふみか、渡辺音々、森山優来、五安城佳歩)

*この記事は仙台市宮城野区中央市民センターが実施している「若者社会参画型学習推進事業」(まいぷろ)と、高校生への記事制作指導を担当したTOHOKU360とのコラボ企画です。

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