【インタビュー「震災とペット」】仙台で飼い主のいない猫の問題や地域猫の取り組みを追い続けている鈴村加菜記者が広島県広島市を訪れ、「NPO法人犬猫みなしご救援隊」の活動を取材。代表の中谷百里さんへのインタビューを3回に分けて紹介し、災害発生時や地域の中でのペットとの向き合い方を考えます。

地域猫に関する条例制定も、周知に課題―仙台市

今年6月、仙台市議会で「仙台市人と猫との共生に関する条例」が可決された。仙台市では、猫の殺処分ゼロに向けて動物管理センターなどの行政やボランティア、町内会が一体となって保護猫の譲渡や「地域猫活動」を進めており、猫の殺処分数は減りつつある。しかし、動物管理センターへの猫に関する苦情は増え続けているため、この条例が制定されたという。

条例制定に向け、5月10日に行われた条例の骨子案についての説明会では、条例案を作成した経緯などが説明された。説明会に参加した市民からは、「うちの団地でも猫の問題がある」「町内会長になって最初に取り組んだのが野良猫の問題」との声があがり、うなずく参加者も多かった。

また、条例案については「このように苦情が相次いでいるならば努力義務ではなく、ある程度の義務化や罰則が必要ではないか」との意見が出された。これに対し、条例案を作成した議員団は「現状では、まずは地域猫活動についての普及啓発が先だと考えている」と回答した。

仙台市では、動物管理センターが収容された猫の譲渡会を開いたり、花壇大手町町内会のように町内会とボランティアの協力で「地域猫活動」が進んでいる地域があったりするものの、より周知が必要なようだ。

仙台市の動物管理センターに引き取られた猫(鈴村加菜撮影)

猫の殺処分ゼロを達成した広島県

全国的に「地域猫活動」がうまくいっている地域はあるのか、どんな取り組みがされているのかを調べてみると、広島県では、近年、動物管理センターでの猫の殺処分が実質的にゼロの状態が続いている。広島県で「地域猫活動」の中心となってきたのが、NPO法人犬猫みなしご救援隊、そして代表の中谷百里さん。

「犬猫みなしご救援隊」は、以前から広島市などの自治体に先立ってTNR(T=捕獲、N=不妊手術、R=元の場所に戻す)などに取り組み、2013年から広島市動物管理センターに収容された殺処分対象の猫の引き取りを開始。「犬猫みなしご救援隊」の施設で、センターに勤める獣医へのTNR不妊手術の研修も行った。「殺処分させないクセをつけたことで、行政の姿勢も変わってきた」という。

地域猫活動を住民に丁寧に説明

そして、2014年12月から、広島市動物管理センターと協働での「地域猫活動」が始まる。中谷さんは当時、地域住民の理解を求めるため、市の職員と2人1組になって町内を説明して回ったという。「例えば、猫嫌いな人には、『私は猫嫌いの人の味方ですよ』という気持ちで話を聞く。せっかく手入れした庭を汚されたら誰だって怒るでしょう。でも、そうやって話を聞いて、説明するうちに悪いのはほんとは猫じゃなくて、無責任に餌を与えるだけの人がいることだということがわかってもらえるようになる。そうやって、これ以上望まれない命を増やさないため、不妊手術をして、猫には一代限りの命を全うしてもらうことが現時点で最善の道ということを理解してもらいました」

また、中谷さんは、「『地域猫活動』はみんなが何かやらないといけないということではない。動物の世界では『無視』も命を守るために大切なことなんです」とも話す。無理に参加を求めれば反発を受けて活動の障害になってしまったり、その矛先が猫たちに向かってしまったりすることもあるからだ。「猫で困っている人がいて、それを助けたいと思う人がいる。まずはその人たちに任せてくれないかと」そうしてTNRを進めていくうち、猫の鳴き声や糞尿の被害は減っていく。「猫嫌いな人」の反応も変わってくるという。

「まずはできるところから」が大切

広島市の「地域猫活動」の成功例は小さな町から始まり、そこからオセロのように徐々に周りの地区に広がっていった。「まずはできるところから」が大切だという。

広島市では、「地域猫活動」によって「『昔ながらの町内会』が動き出した」「誰が猫好きか分からないほど『地域猫』の存在が当たり前でみんなで見守っている」と言われる状況になったという。中谷さんは、「広島が『地域猫』でうまくいったのはうちら(犬猫みなしご救援隊)や私がいたからだというのは間違いないと思います。広島県を変え、今日も広島県を引っ張り続けていると私は自負しています」と話す。

「ただ、全国にそういう団体があるわけではないけど、だからダメということはない。例えば仙台で、うちの地域ではこんな問題がある、というなら、どうしたらいいかというのを一緒に考えます」

中谷さんは現在、動物の保護活動で全国を駆け回りながら、「飼い主のいない猫」の問題や多頭飼育崩壊について話す「みなしご庵」を各地で開いている。

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