「会社員でありながら自由に生きる」新橋の会社員が世界を旅する「リーマントラベラー」に変身した理由

【阿部香里(ローカルニュースライター講座in渋谷)】東松寛文さん(29)は、新橋の大手広告会社に勤務する会社員。常にスーツを身にまとい、髪の毛をきっちり固め、どこから見ても「サラリーマン」風のルックスである。しかし、2012年に一人でアメリカ・ロサンゼルスを旅することになったのをきっかけにその面白さに気づき、台湾、キューバ、コンゴ、スウェーデン、フランスなど、これまでに延べ30か国を周ったという前代未聞の「トラベラー」でもあるのだ。「サラリーマン」と「トラベラー」を見事に両立し、注目を集める東松さんの素顔に迫った。

サラリーマン、それでいてトラベラー

東松さんは、普段は都内中心に営業周りをしながら、週末を利用して海外に飛び、現地の暮らしを体感するように旅している。例えば台湾では、地元の人しか行かない美容院で台湾式シャンプーを体験したり、コンゴではサプールと街を行脚しながら地元の人々と交流をしたり、といった具合に。

そのリアリティが少しでも伝われば、と始めたブログでの動画配信も好評で、今やFacebookページのフォロワーは3000人以上にのぼり、最近は静岡テレビやTOKYO FMなどメディア露出の機会も増えてきている。働きながらここまで身軽に世界を旅することはそう簡単ではないように思えるが、一体何が彼をそう駆り立てるのか。

台湾で台湾式シャンプーを体験する東松さん(本人提供写真)

日本を出たら自分は何者でもないという事に気づいた

ただ単純に旅をすることが良いというわけではなく、それが彼の生き方の「選択肢の一つ」であった、と東松さんは言う。自称敷かれたレールの上をきれいに歩いてきた東松さんにとって、旅は自分の生き方を問う機会となったのだ。「今まで会社の出張で何度も地方を訪れていたけれど、商談には必ず先方の偉い人が出てきて、接待をうけることもしばしば。そうしているうちに、社内の別の人間が来ても同じ待遇をされるのだろう、これが自分である意味があるのか、と違和感を抱き始めました」

そして初めて一人でアメリカに行ったとき、その違和感は危機感に変わった。「常に社畜のように働き、週末は合コンに明け暮れ、いざ日本を出たら自分は何者でもないという事に気づいた。そこからは、東松寛文としてどういう生き方をしたいのか、考えるようになりましたね」。そして、たどり着いたのが『リーマントラベラー』としての生き方だったのである。

サプールに会いにコンゴに行った際の写真(本人提供)

コミュニケーションは身振り手振りで

その選択肢を東松さんに与えてくれたのもまた、旅であった。「これまでの旅を通して気づいたことが二つあって。一つは、文化が違う国でも、コミュニケーションは何とでもなるなと」。TOEIC505点、英語はほとんどわからないという東松さんだが、好奇心が旺盛なこともあり、身振り手振りなど駆使して、ほとんどの相手と交流をはかることができた。

「もう一つは、どのような環境にあっても、心の豊かさをもって生きている人は魅力的だということ。キューバに行ったときに、歩いているだけでいろいろな人が声をかけてくれて。ご飯を食べて行けよ、とかサッカーに混ざらないか、とか自然に自分のコミュニティに招き入れようとする。彼らの平均年収は24000円くらいで、日本とはだいぶ差があるけれど、こんなふうに人とふれあい、心豊かに生活することができるのか、と衝撃でした」

旅行先では身振り手振りで現地の人々と交流する東松寛文さん(本人提供写真)

人生の選択肢をもてば、サラリーマンも悪くない

この気づきが、彼自身にも大きな変化をもたらした。「日本では、以前は大きくなったら会社員になることが当たり前という風潮があって、最近は逆に独立や、起業して自由な働き方をすることがかっこいいという見方がされはじめている。でもそうではなく、会社員でありながら自由な生き方をし、人生を楽しむ。そういう選択肢もあるのではと思ったのです」。現に東松さんは世界各国を旅しながら、現在も週5通勤生活を続けている。大企業であるため会社の福利厚生が良く有給もとりやすいし、安定した収入もある。旅行に費やせるだけの時間とお金が十分つくれるので、そこにはむしろ感謝しているという。

「悪く言うと会社を利用しているみたいですが、仕事をおろそかにはしないし、僕がサラリーマンだからこそ、そのライフスタイルに共感してくれる人も多いはず。今後は旅をしながら自分で得た体験をもとに講演会を開き、それを通じて同じリーマンの皆さんにも自分の生き方を選んでもらえたらと考えています。そしてゆくゆくは学生など若い人たちにも、その選択肢を広げてもらえるようなアプローチができればと思っています」

東松さんの人生の旅は、まだまだここから面白くなっていきそうだ。

この記事は2017年2月〜3月まで東京都渋谷区のコワーキングスペースco-ba shibuyaで開催されたco-ba school「ローカルニュースライター実践講座」の受講生が執筆した記事です。5月下旬からの二期目の受講生を募集中です。

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