【シニアネット仙台】高齢社会の「自立」をデザインする

 仙台市の代表的な繁華街「一番町」のサンモール一番町商店街にNPO法人「シニアのための市民ネットワーク仙台(通称シニアネット仙台)」(丹野惠子理事長)の「一番町サロン」があります。20年ほど前、シニア世代がNPOを立ち上げ、多様な活動の拠点となるサロン的な場所づくりを自力で目指してきました。多くの高齢者たちがボランティアでサロンの維持運営にかかわっています。

 一方、財政難を背景とする介護保険法の改正に伴い、比較的軽度な要支援者を地域の介護力にまかせる流れが強まっています。「一番町サロン」のような、高齢者を地域全体でサポートする取り組みにも関心が高まっています。シニアネット仙台の20年の歩みを振り返り、自立型のサロンの意義や現状について報告します。【佐藤和文:メディアプロジェクト仙台】

さまざまな打ち合わせにも利用されているシニアネット仙台の活動拠点「一番町サロン」(佐藤和文撮影)
さまざまな打ち合わせにも利用されているシニアネット仙台の活動拠点「一番町サロン」(佐藤和文撮影)

(0)報告の前に・・・

筆者は20年前、地元新聞社の記者として「夕陽は沈まない−豊齢社会の構築」というタイトルの報道キャンペーンに携わりました。シニアネット仙台はその延長線上に誕生しました。当時、日本でも民間非営利組織(NPO)の活動に期待する機運が盛り上がっている中、個人の立場でシニアネット仙台の運営に深くかかわるようになりました。まだ、40代半ばでした。

理事長を補佐する役割も引き受けました。ボランティア、非営利活動特有の上下関係や、身分上の権利関係、指揮命令系統のない、平場の人間関係が案外煩わしいことなど、多くの気付きと学びがあって、ちょうど10年でシニアネット仙台の運営を卒業しました。

以来、さらに10年!。間もなく満65歳になります。人口統計上、晴れて(?)高齢者の仲間入りです。いわば「現役の高齢者」であり、シニアネット仙台の当事者でもあった立場で、タイトルのようなリポートを読んでいただくに値する内容にすることができるかどうか、そもそも怪しいとみる向きもあるでしょう。

従来型の「客観性」「公正中立」を旨とするジャーナリズムや報道の観点からは、ややユニークな事例ともなりますが、「シビックジャーナリズム(パブリックジャーナリズム)」「ジャーナリストと市民活動(運動)の関係」「地域に根差したメディアの可能性」なども若干、意識しながら報告します。

(1)20年かけて育てた一番町サロン

■女性会員が7割

 通りに面したオフィスビルの中を、まるで横丁を行くように抜け、一番奥のエレベーターで8階まで上がります。そこがシニアネット仙台の「一番町サロン」です。入り口のドアを開けると、南北方向に細長いメーンスペースが目に入ります。入り口に立って右手奥には定員10人程度の会議室が二つ。シニアネット仙台の事務局スペースが置かれ、会員が自主的に運営する多様な「活動グループ」の活動拠点になっています。フロアの広さは約230平方メートル。

「一番町サロン」の案内看板。サブタイトルの「シニアセンター」には設立から現在に至る経緯が反映している(佐藤和文撮影)
「一番町サロン」の案内看板。サブタイトルの「シニアセンター」には設立から現在に至る経緯が反映している(佐藤和文撮影)

 当初は、運営スタッフの確保の兼ね合いで、週に2日の休みを設定していましたが、活動グループの増加に伴い、現在では月曜から土曜日まで使えるようになっています。シニアネット仙台は、米国のNPO「SeniorNet(シニアネット)」と交流するなど、高齢者のためのパソコン支援でも先駆的な取り組みで知られていました。サロンの左奥のエリアには、関係団体や企業からの寄付などでそろえたパソコンが並んでいます。 

 シニアネット仙台は1995年(平成7年)8月に市民活動組織として発足、活動は今年で21年目に入っています。1999年(平成11年)にNPO法に基づく法人格を取得しました。会員数は2016年(平成28年)4月1日現在で474人(女性304人、男性170人)。

■会費を20年間、据え置き

 年間会費3600円を払うと、隔月に発行される会報が届きます。会員一人ひとりがNPO法人の「社員」で、総会での議決権を有します。最近では、高齢者を顧客ととらえて、必要とされるサービスを提供するNPOも目立ちますが、シニアネット仙台の場合、初めから全員参加型。会員を単なるサービスの受け手としてはとらえず、活動の起案者、活動への参加者としてとらえている点が特徴的です。

 多くのNPOに共通する、決して楽ではない経営環境にあって、月額にすれば300円の年会費を発足以来、一度も値上げしていない点も強調すべきでしょう。年金暮らしに配慮し、なるべく多くのシニアの参加を期待した方針であることは言うまでもありません。(この項は次回に続きます)

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