宮城の古本屋10店が、聖地・金港堂に集結!「古本市」5/23まで開催

【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】宮城県の古本屋10店が参加した「サンモール古本市 in 金港堂2F」(宮城県古書籍商組合事業部主催)が仙台市青葉区一番町の金港堂本店で開かれています。5月23日まで。新型コロナウイルスにかかわるステイホームを乗り切るため、読書の比重が高まっている人も多いことでしょう。古本市の企画を進めてきた「古本あらえみし」経営、土方正志さん(58)、「book cafe火星の庭」経営の前野久美子さん(52)に話をうかがいながら古本世界の空気を楽しみました。

仙台の『聖地』で古本市を!

金港堂本店は一番町の最南端から東北大片平キャンパス北門へと続く「古本屋街」の入り口に当たります。この地域には最盛期には20店以上の古本屋があったといわれ、特に50代後半以降の本好きな人たちにとっては何かと思い出深い『聖地』といえそうです。

金港堂の2階で古本市を開く構想が浮かび上がったのは2019年秋ごろ。2020年に開く予定でしたが、予想もしない新型コロナウイルスの感染拡大のために延期を余儀なくされました。「聖地」とも言える一番町で古本市を、と考えた理由について前野さんは「90年代から仙台に住んでいますが、宝文堂、高山書店、アイエ書店、仙台書店など、地元の書店が市の中心部からどんどん消えていきました。金港堂は「最後の砦」のようなもので、わたしの店にやってくるお客様の間でも別格扱いです」と言います。

前野さん自身、「Book! Book! Sendai」という本の活動に取り組んだ経験があります。金港堂のあるアーケード街「サンモール一番町」で8年ほど続いた「一箱古本市」も前野さんたちの活動の一つでした。

土方さんは「東北学」「仙台学」など東北、仙台に強くこだわった出版で知られた人。新刊書店の経営者として「金港堂の社長さんにも懇意にしてもらっていた」こともあり「金港堂の2階で古本市を」と希望する古本屋さんの計画はどんどん具体化したそうです。

仙台の「古本屋街」の入り口ともいえる場所で、10店もの古本屋が参加する「古本市」は、昔を知る本好きのみなさんならずとも懐かしい光景かもしれません。

多くの本好きでにぎわっている「サンモール古本市」(2021年4月30日、仙台市青葉区一番町の金港堂2階)

「古本」それとも「古書」?

古本市のにぎわいをながめていると、以前から不思議に思っていたことにあらためて気が付きます。「古本」と「古書」、「古本屋」と「古書店」の混在です。

「東北」「仙台」の歴史や文化、暮らしを掘り下げた出版物を発表してきた土方さんは「『本』と言うか『書籍』と言うか、『古本屋さん』と言うか『書店員』と言うかの区別にもつながります。僕の場合は、出版関係の人たちと話すときは「書店」を使います。一般の読者のみなさんと話すときは『本屋』と使い分けています」と説明します。

前野さんは「取り扱っている本に違いがある」と指摘します。「『古本』は現行本に近いもの、絶版・品切れの本も並んでいるが、表紙などが茶色に変色したような、よりプレミアム(希少性)が高い本は『古書』『古書籍』でしょうか。本の品ぞろえに専門性がより求められているかどうかでも『古書店』と『古本屋』が分かれます」

土方さんは新刊出版に加えて2年前に古本屋さんを新たに始めた人。「小商いですよ。自分の場合、仕事柄、大量にたまった本をどう処分するかの問題から始まりました」と話します。

土方さんの実家は北海道・ニセコの実家にあり、父親が亡くなって、空き家になってしまった。当時は海外から観光客を引き込む「インバウンド」で政治も経済も大騒ぎしていたころで、民泊業者が土方さんの実家を貸してくれって言ってきたそうです。

「とにかく豪雪地帯なので一冬家をほうっておくと、どんどん家がいたんでくるので、貸すことにしました。東京時代から実家に本を送って書庫代わりにしていたこともあって、大量の本をどこかに移して家を空っぽにしなければなりませんでした。本を処分するにも、ニセコから札幌までは片道2時間。古本屋に渡すこともできず仙台に送るしかなくなりました。仙台には2011年3月11日の東日本大震災でめちゃくちゃにくずれた本がありました。次の企画で使おうと思っていた資料も、もう使う機会はありそうもない。一度、手放して世の中に戻した方がいいんじゃないか。それなら古本屋さんをやろうということになりました」

まちの古本屋の流儀とは?

前野さんは地方都市の古本屋さんのあり方ついて次のように話しています。

「自分が昭和44年(1969年)生まれで、自分の子ども時代や、若いころに吸収してきたカルチャーの1960年代から1990年代までが一番リアルに分かることもあって、自然と多くなります。それら戦後の大衆文化の出発点ともいえる1920年代の頃にも興味があります。政治も、カルチャーも生活も、日本人の生活が激変していくときの勢いがあり、バーっと庶民文化が花開き、どの分野も魅力的。その間の時代を戦争期も含めて自分なりに追いかけて行こうとは思うが、つい60年代、70年代をウロウロすることになる」

「一方で10代や20代の、初めて古本屋に来るようなお客様にも入りやすいように、間口を広くしようと心がけています。たとえば澁澤龍彦やつげ義春といったら、古本屋や本の愛好家にとっては手垢にまみれていても、どの新刊書店にも並んでいるかといえばそうではなく、初めて知ったらとんでもない人なわけで、それを飽きずに繰り返し並べ続けられるかどうかが地方の街の古本屋として、やっていけるコツなのかなあ、と思う。ありふれているようだけど、最近見かけないという本を売り続けられる店でありたいと思っています」

地域に特化した新刊出版社と古本屋さんのつながりについて土方さんは「東日本大震災前に集めていた資料は、新刊の出版企画で資料として使ったものがほとんどでした。『東北学』『仙台学』などをつくるときに集めた郷土資料です。今後、企画で使おうと思っていた資料もある。郷土本、郷土資料が大量にありました」と振り返ります。

『一人と一冊』が出会う瞬間を用意したい

ネットと古本の世界は本質的に似ています。たとえばYouTubeでは古いコンテンツと新しいコンテンツがほとんど同列に並びます。新しいコンテンツの価値も、もちろんないわけではありませんが、たとえ古いコンテンツでも、見つけた人、利用する人にとって価値があるなら、コンテンツの価値は100%成立します。

前野さんは「古本は基本、お店に在庫は一冊ずつしかありません。入ってくる本はお客様からお譲りいただいたものなので、基本受け身です。その託された本を次の人に届いて欲しいと思って並べている」そうです。

「たいていそれらの本は今の流行や注目を浴びているのとは別のところに存在していて、でもどこかにその本を求めている人がいて、棚の前で出会うわけです。その瞬間を毎日見ていられるのは幸せです。

また、大きなところでは、流行や移り変わりがあると思うのですが、基本的に読書というのは個人的なもので、一人対一冊の関係であり、それはほかの多くの人に支持されているかどうかは別問題です。その人にとって必要か必要じゃないか、面白いか面白くないかがすべて。情報や人の意見が間に入って、影響を受けることはありますが、もっと固有の動機で、その人が主体的に感じるもの。同じアイテムがない古本屋は商売としては大変だけれど、『一人と一冊』が出会う瞬間をどうにか用意できたらと思います。それをこつこつと続けたい」

土方さんは「古本と新刊は違いなど実はまったくないと昔から言われています」と指摘して、以下のように締めくくりました。

「読者にとっては、知らない本を手に取ったら、それが古本であろうが、新刊であろうが、その読者にとっては、その本は新しい本なんです。古本、新刊と区別する必要はない。その点を今一度思い出しているところです」

サンモール古本市 in 金港堂2F

【期間】2021年4月23日〜5月23日(営業時間は9:15〜19:00)
【場所】金港堂本店2階(仙台市青葉区一番町2-3-26)

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