台風19号上陸から一週間、福島県相馬市で続く泥との苦闘

台風19号の上陸から一週間以上が過ぎましたが、被災地では住民が家屋の浸水や土砂流入などの片付けに追われ、復旧には人手を要しています。福島県相馬市出身のローカルジャーナリスト・寺島英弥さんが、苦闘する故郷・相馬市の13日から19日までの状況を報告します。

13日 復旧未定の断水の中、泥との闘い

台風一過の13日、郷里の相馬に行ってきました。実家の老親が暮らす地区は無事でしたが、前夜の台風で決壊した宇多川の水が流れ込んだ街なかは、店々の人が総出で泥かきのさなか。

私が手伝いに行ったのは、川に近い、ビートルズバンドのバンマスの同級生夫婦宅。「こんな経験初めてだ」と前夜の電話で言っていたとおり、浸水はひたひたと、あっという間に水かさ60センチに。

自宅ばかりでなく、先週に練習に行ったばかりの自前のスタジオも「泥のじゅうたん」。宝物のギターや音響機材はどうにか救ったけれど、JBLの大型スピーカーは重すぎて一部水没。

入口の泥水をかき出し、雑巾やモップでスタジオの床の泥を拭き取るつもりが、相馬市内は復旧未定の断水状態。満足に水を使えず、どこの店も家も困っています。仲間も駆けつけましたが、こびりついた泥はしぶとく、乾くとすぐまた床は元の泥の色に。長い闘いになります。

「相馬を小さなリバプールに」と、彼は4月に「中村コーヒー店」(中村は相馬の旧町名)という喫茶店を街に開き、ビートルズのライブを催しています。手塩に掛けた店は奇跡のように浸水を免れ、音楽で復興を-の夢はつながりました。清掃応援にも練習にもまた行かねば…。

15日 「100円コーヒー」で被災した街の人に一服を

同級生の彼、桜井茂紀くんと妻一枝さんはライブハウスの「中村コーヒー店」(ストロベリーフィールズ)を4月に開きましたが、店は奇跡的に無事で、市内が断水の中で井戸水が使えたことから、15日再開し、被災した街の人に一服を…と紙コップの「100円コーヒー」を始めました。

地元の店々、家々の後片付けが続いた初日、お客はまだ「ぼちぼち」ですが、店内に流れるビートルズで気持ちにも癒しを、と語ります。

17日 相馬の同級生からのSOS

原発事故が起きた時もそうでしたが、被災地になった郷里に毎日でも飛んでいって、友人たちの復旧を手伝いたい、という気持ちに心揺らぎます。

17日、女性一人でお店を営む相馬市の幼なじみに電話しました。12日夜のニュースで、宇多川からの氾濫で真っ先に地名が挙がった、常磐線より浜寄りの地区にお住まいで、そこには45センチ、水が上がったそうです。

床下浸水でしたが、大事なお店の商品を救いきれず、商品の冷蔵庫にも泥水が入り、倉庫も同様で手付かず。店の床のカーペットは水で重くて運び出せないままだそうです。水道はきょう戻りましたが、ボイラー類が壊れてお風呂も無理…。

同級生でLINEをしていて、そこに彼女から、「あの大嵐の中、名取(北に40キロ)に住む子どもの家族が心配して車を飛ばし、助けに駆けつけてくれた。それがこの災難の中で一番うれしかったことです」との投稿がありました。

でも、できたことは家族での応急の泥のかき出しだけ。水に浸かった自宅の床下も、泥を掻き出さねばなりませんが、それにも人手が必要。私の同級生たちをはじめ、こうした家々が数えきれません。

相馬市社協はボランティア受け入れを始めており、「女手一つで困っています」と派遣を申し込みましたが、高齢者だけの被災世帯も多く、そちらが優先なのだそうです。先行きがまったく見えず、途方に暮れています。

もう一つ、「東北でも宮城県の丸森町など、大被害の地域が連日報道され、関心も支援も向かうけれど、『その他』のたくさんの被災地が忘れられてしまうのが怖い」と話していました。

19日 人手が足りない

台風19号の水害から8日目、10月19日の相馬市街です。氾濫した宇多川べりの地域には自衛隊の災害復旧活動が入って、道路の泥はほぼ取り除かれました。

中心部の一角。この地区では前日まで断水が続きました。

床上床下浸水の被害にあった店や家では、泥かきや大量の災害ごみの処分で住民たちは疲れ、まだらな復旧状態の水にも不自由しながら、後片付けは進んでいません。やっと出始めた水道水もすぐには飲めず、飲料用はまだミネラルウォーター。

畳の撤去ひとつにも人手が要り、若い世代が少なくなった町では、離れて暮らす子どもたちの手伝いも連日はかないません。さらに衛生上からも必要なのは、床板を外しての泥の消毒作業。それもまた男手を要します。

一番被災がひどかった地区には、ようやく社協が受け入れたボランティアたちがスコップを手に入り始め、関西の高校生グループの姿も見えました。ただ、まだまだ一部。大勢のボランティアが求められています。

私は苦闘中の同級生たちに水と手作りカレーを届けましたが、できることは限られ、古里と離れていることの歯痒さ…。うれしかったのは、訪ねた一軒で、別の同級生が仲間を連れて手伝いに来てくれた、またがんばれる、という話を聞いたことでした。

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